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離婚をした場合、夫から妻へ、又は妻から夫へ、慰謝料、養育費、財産分与等金銭の授受が行われることが多いと思います。
この場合、受け取る側、分与する側に税金はかかるのか、心配になります。
離婚給付との関係では、先ず贈与税が問題になります。
さらに、不動産を分与する場合、譲渡所得税、不動産取得税等も問題となります。
以下、財産を分与される側、分与する側に分けてみていきます。
離婚に伴う財産分与、慰謝料、養育費については、何れも社会通念上妥当である限り基本的に贈与税は課されません。
①財産分与
財産分与は婚姻期間中に共同で形成した財産の精算、及び離婚後の扶養を意図するものであり、贈与ではありません。
なので原則として贈与税は課されません。*
ただし、財産分与として取得した財産の額が、婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額、その他一切の事情を考慮してもなお過当とみられる場合は、過当な部分は贈与税の対象になります。
また、離婚自体が、贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合には、課税対象となります。
*国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4405.htm
②慰謝料
慰謝料は離婚により受けた精神的苦痛に対する損害賠償であり、贈与ではありません。
なので原則として贈与税は課されません。
ただし、こちらも財産分与と同様に、不相当に過大な慰謝料は、相当な範囲を超える部分について単なる贈与と見做される可能性もあるので注意が必要です。
所得税法9条においても、損害賠償は相当なものである限り非課税所得とされています。
③養育費
養育費は未成熟の子に対する親の扶養義務の履行です。
子の教育、生活に充てるため必要と認められる範囲であれば贈与税は課されません。*
*国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4405.htm
しかしながら、少々注意が必要な場合もあります。
この点、養育費は親の扶養義務の履行であり、養育費の負担は月々発生するものなので毎月払いが原則です。
しかしながら、支払義務者側において、将来生活状況、経済状況により履行されない恐れがあるような場合、離婚時に一括で受け取ったほうが安心ということもあり、例外的に養育費を一括で支払われることがあります。
このように将来の養育費が未だ具体的な負担として発生していない時点において、一括で多額の金銭を受けると、これが贈与とみなされ、贈与税が課される可能性があります。
従って、この金銭がが養育費として支払われたこと、また、これが子の養育に充当されたことを証明できるようにしておいた方が安心です。
離婚協議書を作成の上、「養育費として金〇〇〇万円を支払う」等明記しておいたり、また、子の養育に使用した際の控え等を残しておくとよいでしょう。
以上のように、財産分与、慰謝料、養育費が金銭で、且つ相当な範囲・方法でなされた場合には、贈与税の心配はなさそうです。
なお、財産分与や慰謝料として不動産を譲り受ける場合、不動産取得税と登録免許税が課されることがありますので、少し注意が必要です。
○不動産取得税
不動産を取得した場合、固定資産課税台帳に登録されている価格に3%(ただし、平成27年3月31日までに宅地等を取得した場合、取得した不動産の2分の1の額を課税標準額とする)を乗じた価格が不動産取得税となります。
※一定の要件を満たすと軽減の措置があります。
ただし、離婚においての不動産取得税は、清算的財産分与(夫婦の財産の清算)として受け取った分にはかかりません。たとえ夫から妻へ不動産名義が変わった場合でも、実質的にはもともと妻の持分であった所有権を確認したにすぎず、実体としては財産移転ではないとみなされるからです。
これに対し、慰謝料として不動産を受け取った場合や、扶養的財産分与(離婚後の生活の保障)として不動産を受け取った場合、不動産取得税が課税されることがあります。
○登録免許税
夫婦の一方から分与された不動産をについて所有権の移転登記をする際、法務局に収める税金です。
財産分与を受けた側に、固定資産税評価額の2%の登録免許税がかかります。
基本的にに金銭で財産を分与する場合、課税されることはありません。
しかし、不動産を財産分与、慰謝料として分与した場合、譲渡所得税の対象になります。
譲渡所得とは、譲渡する資産の値上がり益(キャピタルゲイン)に対して課税するものです。
譲渡が有償か無償であるかは問いません。
財産分与する者は、値上がり益の生じている財産を分与することにより、また、分与義務の消滅という経済的利益を享受することになるから、譲渡所得課税の対象となる、という考えに基づきます。
所得税基本通達では以下のように規定しています。
「財産の分与として資産の移転があった場合には、その分与をした者は、その分与をした時の価額により当該資産を譲渡したこととなる(所基通33-1の4)」
上記のように、個人が資産の分与(譲渡)によって得た利益(譲渡所得)には所得税が課されますが、不動産等の資産が購入したときより値下がりしていた場合には、所得は生じませんので税金はかかりません。
特に古くから所有している不動産で取得費が小さい場合や、バブル期で不動産や株価の値上がりが激しかったような時期には大きな問題になるところですが、不動産等資産の値下がり傾向にある昨今では、所得は生じませんので、多くの場合税が課される心配はなさそうです。
また、居住用の不動産を分与(譲渡)したような場合には、3000万円の特別控除を受けることができます(措置法35条1項)。
すなわち、それまで住んでいたような不動産の分与の場合、3000万円以上の値上がりがなければ課税されることはありません。
さらに、分与(譲渡)した年の1月1日時点において所有期間が10年を超える不動産については、3000万円の控除後に税率軽減の措置があります。
このような特例の措置を受けられるか否かの判断は一度税の専門家に相談することをお勧め致します。
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