〒223‐0061 神奈川県横浜市港北区日吉1丁目7番43号
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離婚したけど養育費は一度も支払ってもらったことがない。
一応決めたけど、支払われたり、支払われなかったり…
最初は払われていたけど最近はストップしている…
という方も多いのではないでしょうか。
そのうち払ってもらえるだろうからと放置している方もいらっしゃるでしょう。
しかし、養育費は請求せず一定期間放置しておくと時効により消滅してしまう可能性があります。
養育費というのはいつまで請求できるのでしょうか?
結論から言いますと、
養育費債権の消滅時効は5年です。(すでに発生した養育費債権です)
養育費というのは毎月定期的に支払われるものです。
このように定期的に支払われる債権のことを定期金債権といいます。
昨年(2020年)民法が改正されましたが、改正される前は、このような定期金債権の時効は「5年間の短期消滅時効にかかる債権」(旧民法169条)として定められていたので、養育費の時効も5年でした。
改正法では「債権者が権利を行使できることを知った時から5年間行使しないとき」に時効消滅するとされ、様々な短期消滅時効制度は廃止統一されました。ただ、養育費は元々5年だったので変更はありません。
養育費を取り決める場合、離婚協議書を交わしたり、公正証書を作成したり、裁判手続きで決めるなどの方法があります。
離婚協議書や公正証書を作成した場合、消滅時効は先に述べたとおり5年ですが、裁判手続きで定めたものについては別の定めがあり、10年となります。※
※新法169条
確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。
ここまでは養育費の取り決めが行われていたケース、つまり、すでに発生している養育費債
権の話ですが、離婚時や離婚後になっても養育費の取り決めをしていない場合もあります。
では、取り決めなかった場合、過去の養育費はいつまで請求できるのでしょうか?
残念ながら、養育費は、具体的な取り決めをしていないと、過去分については認められません。
つまり、請求した時点からの分しかもらえませんので、まだ請求していない方は早急に請求の手続きをとる必要があります
夫婦には同居・協力・扶助義務というのがあります(民法752条)。
「遺棄」というのは、正当な理由なく同居を拒否し、この義務を履行しないことをいいます。
また、「悪意」というのは夫婦共同生活を壊してしまおうとする積極的な意図、若しくはこれを認容する意思のことをいいます。
つまり、「悪意の遺棄」というのは積極的に夫婦共同生活を壊す意図を以て相手を置き去りにして家を出てしまい、生活費も入れない行為や、相手方を自宅から追い出すだけでなく相手が出ざるを得ないように仕向け復帰を拒むことも含まれます。
裁判例上で悪意の遺棄とされる典型的な事例として、夫が家を飛び出して、身体障害者の妻を自宅に置き去りにし、長期に亘り全く生活費を送金しなかった事案があります。
また、夫が出発予定や行き先も告げず、以後の生活方針についても何ら相談することなく、妻と3人の子供をおいて独断で上京に踏み切った事案においても、裁判所は「敢えて夫婦、家族としての共同生活を放棄した」として悪意の遺棄を認定しています。
さらに、夫婦が外形上は同居していても、配偶者らしい扱いをしていなければ(性交拒否、精神的遺棄)遺棄に当たるとする見解もあります。
その他、婚姻費用分担義務(民法760条)に違反する場合も遺棄に該当するとする見解もあります。
悪意の遺棄は、法定の離婚原因(民法770条第1項第2号)とまります。
相手方に悪意の遺棄があれば離婚請求が認められます。
2.同居義務違反とその正当理由
1で述べたとおり、夫婦には同居・協力・扶助義務というのがあります(民法752条)。
同居を拒否しこの義務を履行しなかった配偶者は、正当な理由がない限り「悪意の遺棄」をしたことになり、婚姻関係破綻の主たる原因を作ったとして、当該配偶者(有責配偶者)からの離婚請求がみとめられづらくなったり、他方の配偶者から慰謝料の請求をされる可能性があります。
しかしながら、上記同居義務違反は、単に同居していない状況すべてをいうのではなく、正当な理由がない、不当な同居義務違反に限られます。
したがって、同居義務に違反するような場合でも、正当な理由があれば同居義務違反とはならず、「悪意の遺棄」にはあたらないということになります。例えば、夫が単身赴任するような場合や、病気や子供の学校の都合で一時的に離れて暮らす場合、その他夫婦が冷却期間を置くためやむを得ず当分の間別居するような場合も同居義務違反ということはいえないでしょう。
子ども名義の預金や学資保険などの財産は、離婚の際の財産分与の対象になるのでしょうか。
基本的に当事者間の協議が整えば、どのように分与しても構いません。
子どものために使用することを前提として、子どもを引き取る方が取得するというのでもよろしいでしょう。
では夫婦間で揉めた場合はどのように考えればよいのでしょう。
この場合、個別の事情により判断されることになり画一的な基準はありません。
ただ、財産分与の対象となるのは、主に夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産です。
子ども名義の預貯金や学資保険が、協力して形成した財産として財産分与の対象になるか否かは、その預貯金、学資保険の掛け金の出所に依ることになりますでしょうか。
この子どもの貯蓄や学資保険の掛け金が家計から拠出されていたのであれば、夫婦で協力して形成した財産ということになり、財産分与の対象ということになると考えられますし、一方、子ども自身がもらったお年玉やお祝金から貯蓄されたものであれば、子ども自身の財産と判断され、財産分与の対象にならないと考えられます。
以下財産分与に関し参考になる裁判例をご紹介します。
東京高等裁判所平成7年4月27日判決ですが、以下のように述べています。
「婚姻期間中に得られた収入等により夫婦のいずれかの名義又は子供名義で取得した財産は、夫婦の共有財産に当たるもので、財産分与の対象となることは明らかである。
婚姻中に取得した個々の財産が各配偶者の特有財産であるか、それとも夫婦の共有財産に該当するかを判断するに当たっては、取得の際の原資、取得した財産の維持管理の貢献度等を考慮して判断しなければならないが、特段の事情が認められない場合には、夫婦の共有財産に属するものとして、財産分与の対象となるものと言わねばならない。」
上記から、子ども名義の預金についても財産分与の対象になるかどうかは、お金の出所がポイントになります。
自分や配偶者の給料などを子ども名義で貯金している場合は、夫婦の共有財産と考えられるため、財産分与の対象になると考えられます。
この度性格の不一致により離婚することになりました。
離婚を申し入れたのは自分です。
妻からは慰謝料を要求されています。
性格の不一致という理由で離婚する場合でも、慰謝料を払う必要があるのでしょうか。
性格の不一致で離婚する場合等や特にどちらにも離婚原因がない事例では、基本的に慰謝料が発生しません。
ですので、本件のように性格の不一致で離婚に至る場合、特にどちらかに落ち度があるわけではありませんので、慰謝料を支払う義務はないものと思われます。
ただ、一方は離婚を望んでいるけど、もう一方は望んでいない場合、慰謝料を支払って離婚に同意してもらうということもあります。
このように、性格の不一致でも、離婚を進める交渉の過程で慰謝料を支払うこともありますが、通常は支払う必要はないでしょう。
現在離婚を考えています。
夫は5歳の息子を母親である私が育てることに異存はないけれど、俺は長男だから息子の親権だけは譲れないと主張しています。
親権は父親のままで、私が育てるということはできるのでしょうか。
結論からいいますと不可能ではありません。
父親が親権を持ちつつ、母親が育てることもできます。
親権は大きく分けて以下二つに分かれます。
〇身上監護権…未成年の子に社会人としての社会性を身につけさせるため、身体的に監督・保護し、また、精神的発達を図るため配慮すること。
具体的には
①居所指定権
②懲戒権(躾、教育)
③職業許可権、
④身分上の行為(15歳未満の子の氏の変更、養子縁組又は離縁の代諾、離縁の訴え・相続の承認・放棄)
〇財産管理権…未成年の子が財産を有するときに、その財産を管理し、その財産上の法律行為につき子を代理し、同意を与える権利。
監護権は親権の一部なので、通常、親権者となった者が親権に基づき未成年の子を監護養育することになります。
しかしながら、父母双方が親権に固執しているなど、折衷案として例外的に親権から監護権を分けることがあるのです。
母親としては、親権を巡り父親と争い、親権自体を失ったり、離婚できなくなるより、たとえ親権はなくても、子供と生活できれば十分であると考え、監護権のみで妥協することもあるようです。
通常監護親の権限の範囲は前記①②③を含むとされています。
しかしながら、権限を分ける場合、不都合なこともあります。
例えば、母親だけでは各種手当の受給ができないことがあり、父親の協力が必要になります。
また、交通事故の示談等にも親権者の協力が必要になり、離婚後も父親と頻繁なやり取りが必要となることが想定されます。
離婚後も父母が円満な関係を維持できていればさほど問題ではないかもしれませんが、離婚を巡る確執が激しかったような場合、離婚後はできればあまり交流を持ちたくないと考えるかもしれません。
このようなやり取りを避けたいのであれば、親権と監護権は分属させないほうがいいかもしれません。
よく養育費の一括支払いはできますかというご質問もあります。
結論からいいますと、できないことはないけれど、色々注意が必要です。
たしかに養育費は、一括でもらえれば、支払いが滞る心配もなく、受け取る方としては大変心強いものです。
実際、離婚時は払うと約束しても、その後色々理由をこじ付け払われなくなるケースも多いと聞きます。
しかしながら、養育費の支払は毎月払いが原則となっています。
これは、養育費が子供の日々の生活費だからであり、その支払い義務はその都度発生するものですから、当然にまとめて請求できるものではありません。
当事者の合意があれば一括支払の約束も可能ではありますが、将来の分まで支払うとなるとかなり高額になってきます。まずは支払う側に支払能力があり、一括払いを了承している必要ということになります。
また、この高額な金銭を受け取る側が計画性をもって子供のために使用できれば良いのですが、自分のために費消するケースも少なからず出てきます。
そういった場合、成人を前に子どもが困窮してしまう事態にもなりかねません。
このような事態を回避するため、信託銀行等に預ける等して、計画的に支払われるよう工夫する必要がありそうです。
さらに、もう一つ気を付けないといけないのは贈与税の課税問題です。
通常養育費というのは、親の扶養義務を履行するものであり、その額が通常必要と認められる範囲であれば贈与税は賦課されません。*
*国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4405.htm
ただ、先ほども申し上げた通り、養育費は毎月払いが原則です。
支払義務が発生していない将来の分まで受け取るとなると、毎月の必要額を超えていると認定されかねず、贈与税が賦課される可能性を否定できません。
一括払いにするのであれば、後日子の養育に使用したことを証明できるよう、領収書等しっかり保存の上整理しておいた方がよさそうです。
養育費について、ご心配なことがあれば、まずはご相談ください。
養育費はいつまでもらえるのか、というご相談を頂きます。
親は独立して生活を営むことができない「未成熟子」に対し扶養義務を負うとされています。この「未成熟子」というは一般に成年に達しない子とされています。
上記から考えると養育費は原則20歳までもらえるということになります。
ただ、子が大学等に進学しており、成人していても独立した生計を営んでいないような場合には、20歳を超えていても「未成熟子」として親の扶養義務が認められる場合があります。
以下、参考になる裁判例をご紹介します。
この事案は、妻から夫に対して離婚を求めるとともに、3人の子の親権、養育費、財産分与等が求められたものでしたが、以下のように述べて養育費支払義務の終期を22歳までとしました。
「養育費支払義務は、一般には子が成人に達した段階で消滅するのが原則と考えられる。しかし、その一方で、4年生大学への進学率が相当高い割合に達している現状において、子が大学へ進学する場合、学費や生活費に不足を生じることはやむを得ないことと言うべきである。本件においては、非監護親は、監護親の収入を十分に承知したうえで、子が大学を卒業することを強く望んでいる旨を明確に述べているから、子の大学進学に関する費用を自らが負担する旨の認識を示したものと判断することができる。
また、もし、将来子が大学に進学しなかった場合には、そのことが明らかになった段階で、家庭裁判所に養育費減額等の申し立て等を行うことにより不合理な結論を避けることは十分に可能である。よって、本件においては、子供らが成年に達した後においても、4年制大学の卒業が予定される満22歳時までは、養育費支払義務が継続されるべき格別の事情が存在するものと認められ、夫が支払うべき養育費の終期は子供らが満22歳に達するまでと定めるのが相当である。」と判断しました。
東京地方裁判所平成17年4月15日
上記は、支払義務者(父親)も子の大学進学を望んでいる場合ですので全ての事案に当てはまるわけではありません。
では、支払義務者が大学進学に同意していなかった場合はどうでしょう。
以下、この件に関し参考になる裁判例をご紹介します。
この事案は、成年に達した子が自ら親に対し大学在学中の扶養料を求めたものです。
「抗告人(子)の大学進学は相手方である父の同意を得たものではなく、一般に成年に達した子の大学教育の費用を親が負担すべきであるとまでは言えないが、4年生大学への進学率が高まってきており、相手方の学歴や抗告人の学業成績からすれば、抗告人の4年生大学進学は予想されていたこと、抗告人及び同居親である母の収入だけでは抗告人が大学で学業を続けながら生計を維持することは困難であること、相手方は今後とも一定程度の収入を得ることが見込まれること、相手方が話し合いによるものであれば一定額の支払に応じると述べているなどの一切の事情を考慮すれば、相手方に対し、抗告人の学校関係費用、生活費等の不足額の一部を、原告が大学を卒業すると見込まれる月まで、扶養料として支払うよう命じるのが相当である。」と判断しています。
東京高等裁判所平成22年7月30日
(家庭裁判月報)
ただ、上記裁判例は、抗告人(子)が大学卒業まで毎月15万円の支払いを求めたのに対し毎月3万円の支払いを命じたに止まり、これは父親が支払に応じると述べていた額でした。
支払は命じたものの、足りない分を補填する程度にとどまっています。
養育費をいつまで支払うかについては、当事者間で合意さえできれば基本自由であり、大学卒業まででも、大学院進学の場合は大学院卒業までと取り決めることもできます。
離婚時にしっかり話し合って大学卒業まで支払ってもらいたいものです。
養育費について、ご心配なことがあれば、まずはご相談ください。
私は、子供の親権者となって離婚し、現在元夫から養育費をもらっていますが、この度再婚することになりました。私が再婚したら子どもの養育費はもらえなくなるのでしょうか?
というご相談があります。
結論からいいますと、養育費が減額、若しくは免除になる可能性はあります。
しかしながら、再婚したからといって必ずしも養育費がもらえなくなるわけではありません。
子どもを連れて親が再婚しても、当然に再婚相手とお子様の間に親子関係が生じるわけではなく、お子様と相手が養子縁組をしてはじめて親子関係が生じます。
なので再婚相手とお子様が養子縁組しない場合は、再婚相手に子の扶養義務はなく、そのまま元夫(実親)が子に対し一次的な扶養義務を負うことになり、養育費をそのままもらえることになります。
養子縁組をして親子関係が生じると、養親は子に扶養義務を負うことになります。
この場合でも実親の子に対する扶養義務が当然になくなるわけではありませんが、子に対し一次的に扶養義務を負うのは養親となり、実親は二次的な扶養義務を負うにすぎないと解されています。
ただ実親は、子が養子縁組をしたからといって勝手に養育費の支払いを打ち切っていいわけではなく、ちゃんと協議のうえ減額で合意するか、若しくは調停を申し立て、裁判所の判断を経てなくてはなりません。
元夫が養育費減額の調停を申し立てますと、養育費が減額若しくは免除される可能性が高いということになります。
子連れ再婚しましたが、この度その再婚相手とも離婚することになりました。
子どもと再婚相手は養子縁組しています。
この場合、離婚後養親(再婚相手)から養育費は貰えるのでしょうか?
結論から申し上げますと、養子縁組が継続している間は貰えることになります。
前記事で再婚相手と子が養子縁組した場合、一次的に扶養義務を負うのは養親だとお伝えしました。
この義務は法律上の親子関係がある限り継続します。
なので、この法律上の親子関係が解消されない限り貰えることになります。
ただ、婚姻に伴い養子縁組したのですから、離婚するのであれば父母の協議で解消することが多いでしょうか。
相手が応じない場合は調停を申し立てることになります。
養子縁組を継続することについてはメリット、デメリットがあります。
メリットとしては、先述のように養育費を貰えることが挙げられます。
また、養親に財産があれば、その養親の財産を相続することができます。
一方デメリットとしては、仮に子が先に亡くなった場合、子に配偶者や子がいなければ養親が相続権を持つことになります。
また、将来養親が生活に困窮する事態が生じたとき、扶養請求される可能性もあります。
養子縁組の解消か継続か、慎重に検討する必要がありそうです。
離婚して、子供は母親が引き取ることになったのですが、夫には多額の借金があり、生活が苦しいから養育費は支払わないと言われています。
というご相談を受けることがあります。
上記のようなケースの場合、養育費を支払わなくてよいのでしょうか?
親権者とならなくても、親であることに変わりなく、子供に対して扶養義務を負うことになりますので、養育費を支払わなくてはなりません。
養育費支払義務は「生活保持義務」と言われ、親は、自分の生活を保持するのと同程度の生活を子供に保持させる義務があります。
親に余力があるときに扶養すればいいという「生活扶助義務」とは異なるのです。
なので、単に借金がある、収入が低いという理由から養育費の支払いを免れることはできません。
現に自分の生活が維持出来ている以上、自らの生活を削ってでも子にも同等の生活を保障しなくてはなりません。
また、無職の場合でも潜在的稼働能力があるとして収入が認定されることもあります。
したがって、多額の借金があっても自らの生活が維持されて、借金の返済もできているようであれば、子どもの扶養義務を免れる余地はなく、養育費の支払いを拒むことはできません。
単に借金があって生活が苦しい状況でも、あきらめないで交渉するとよろしいでしょう。
離婚という話になったとき、居住用の不動産の処遇について問題になることが多いですね。
買った時より価値が上昇していて、売却のうえ住宅ローンを返しても利益が出るケースではスムーズに財産分与の話も進むでしょうが、長い不況の後ですし、また購入して間もない場合等にはなかなかプラスにはならず、売却してローンを返してもなお負債を抱えることも多いかと思います(オーバーローン)。
このような場合によくご質問をいただくのは、このマイナス財産も財産分与の対象になるのか否かということです。
不動産以外に預貯金等財産があれば、その預貯金等を負債に充当することになりますでしょうか。
それでもなお、負債が残るような場合はどうでしょう。
基本的な考え方としては、財産分与の対象はプラスの財産のみということになります。
なので、ローンの名義人がご主人様であれば、ご主人様が単独で返す義務を負うことになり、マイナス分まで財産分与されるわけではありません。
裁判官やケースにもよりますが裁判実務では上記のような取り扱いが多いようですが、公平という観点からするとマイナスの財産も平等に分けるのが筋という気もします。
ただ、母親が子どもを引き取って離婚するような場合は、離婚後の母子の生活を考慮して夫がすべて引き受けるというのが妥当な考え方かもしれません。
この辺りは夫婦の協議次第ということになりますでしょうか。
もっとも、この住宅ローンについては奥様も連帯債務者になっているケースもあるかと思います。
この場合は連帯債務の負担割合のとおり金融機関に対して返済義務を負いますので、結果としてマイナスの財産も財産分与したのと同様の結果になりますでしょうか。
心配なことがあれば、まずはご相談ください。
離婚協議書作成をご依頼された際に
「へそくりは財産分与の対象になるのでしょうか。」
というご質問をいただきます。
財産分与というのは、夫婦で協力して形成した財産を離婚に際して清算することをいいます。
日本は夫婦別産制(民法762条)をとっているので、婚姻前から有している財産や、婚姻後であっても相続や贈与等、自己の名前で得た財産はその名義人の特有財産になります。
これらは夫婦で協力して形成した財産とはいえず財産分与の対象にはなりません。
ですのでへそくりが財産分与の対象となるか否かはへそくりの出処から検討していくことになります。
このへそくりが、結婚前から貯めていたお金だったり、結婚後であっても親からもらったお金等であればその本人の特有財産ということになり、財産分与の対象とはならないでしょう。
一方このへそくりが夫(又は妻)の給与から貯めたものであればどうでしょう。
夫の収入は夫が個人の名前で得たものでも一度家計に入れば夫婦の共有ということになります。
妻がこの夫の収入からへそくりをしていたのであれば、このへそくりは夫婦の共有財産ということになり、離婚する際に財産分与の対象になることになります。
もっともこのへそくり、タイミングよく発見できればよいのですが、隠されてしまうと結構厄介で、容易に発見できるものではありません。
弁護士に依頼すれば弁護士照会で口座の調査もできると聞きますが、銀行名、支店名まで判明していないとなかなか難しいようです。
へそくりの口座が自宅最寄りの銀行にあればいいのですが、縁もゆかりもない場所で作られていたら探すのはかなり困難です。
このような場合は日頃銀行から送られてくる郵便物を頼りに探すこともあるようです。
離婚が頭を過ぎったら予め調べておいたほうがよさそうです。
勝手に離婚届を出されるのを防ぐ方法として、離婚届不受理申出書というものがあります。
離婚届の不受理申出というのは、離婚する意思がないのに勝手に離婚届を提出されそうな場合や、一旦離婚届に署名押印したが、その後、離婚の意思が変わってしまった場合等に、離婚届が役所に提出されても受理しないでほしいと申し入れる書面です。
協議離婚というのは、当事者双方が合意し、戸籍届出をして初めて法的効力が発生するものです。
本来当事者双方の合意が必要なので、一方当事者の意思を無視した届出は認められませんが、役所はいちいち当事者双方の意思をチェックしているわけではありませんので、形式的に整った届が提出されるとそのまま受理されてしまうことになります。
本来当事者双方に離婚の意思が必要なので、勝手に提出された離婚届による離婚は無効ということになりますが、ただ、無効として戸籍を訂正するためには、裁判をして判決を得なくてはなりません。
一度受理されてしまうと、その訂正はとても大変なものとなってしまいます。
このように勝手な離婚届提出を防止したい場合に利用するのが離婚届不受理申出書ということになります。
この不受理申出書は原則として申出人の本籍地の市区町村に提出することになります。
不受理申出書には特に書式等はなく、自筆の書面でも構いませんが、各市区町村には定形の用紙が備えられていますので、そちらを利用するとよろしいでしょう。
夫婦が離婚する場合、どちらか一人を子の親権者と決めなければなりません。(民法819条1項)
離婚届にも親権者を記載する欄があり、親権者が決められていないと受理されません。
この親権者、どのように決めるかといいますと、まずは当事者間の話し合いで決めることになります。
しかしながら、子の親権を争うケースは多く、話し合いで結論がでないときは、親権者指定の調停、審判という方法に頼らざるを得ません。
親権者を決める判断基準とし
て挙げられるのは、
○監護の継続性
○母親優先の基準
○子の意思の尊重
○兄弟姉妹の分離が妥当か
上記の他、経済的事情、居住教育環境、親族友人の援助環境等があります。
子との心理的結びつきを重視し、子を現に監護している者を優先する。
子の幼児期における生育には母親の愛情が不可欠である。
このような考えから、これまで離婚の際は子を実際に監護してきた母親に親権を認めるというのが主流であったように思います。
しかしながら、最近は家庭における父母の役割が変化しつつあることから、一律に母親が幼い子の養育に適しているとは言えないという考え方もあります。
また、つい最近ある裁判の判決が話題になりました。
5年以上に亘り別居している夫婦が、離婚の是非と娘の親権を争った裁判で、千葉地方裁判所松戸支部は、別居中の父親に親権を認め、母親に長女を引き渡すよう命じる判決を出したという記事が新聞各紙に掲載されたのです(平成28年3月29日付判決)。
この事案は、夫婦の別居の際に妻が夫に無断で娘を連れて行き、約5年間もの間ほとんど面会をさせてもらえなかった夫が、離婚の是非と娘の親権を巡って妻と争っていた事案です。
先に述べたとおり、従来親権者や養育者を法的に決定する際には、成育環境が変わるのは子供に不利益との考えから同居中の親を優先する「継続性の原則」や、母親が養育するのが望ましいとする「母親優先の原則」などが重要な要件とされてきましたが、この判決で、裁判官は「母親側の『長女を慣れ親しんだ環境から引き離すのは不当』とする主張は杞憂にすぎない」と述べました。
また、判決によると、夫は親権者となったら妻に対し娘と年間100日程度の面会を認め、約束を破った場合は親権変更の理由となることを提案、これに対し妻は月1回、2時間程度の監視付き面会しか認めないと主張していました。
裁判所は、突然妻が娘を連れて別居したことや5年間にわたり父親と面会させなかったことも考慮し、夫婦で長女の成長を支えるためには、より多くの面会日数を提案した夫の方が親権者にふさわしいと判断したようです。
上記のように、この判決は、同居中の親を優先する「継続性の原則」や「母親優先の原則」から、もう一方の親と子どもとの関係をより友好に保てる親を親権者とする考え方である「寛容性の原則」を重視したものといえます。
子供の親権は個々の事情にも依りますので、かならずしも今後、調停や審判がこの判決と同様な判断をするは限りません。
ただ、「継続性の原則」や「母親優先の原則」にとらわれることなく、何が子供の成長にとって望ましいか、という観点から判断した点において今後の参考になる判決かと思います。
協議離婚に際して親権、面会交流を定めるときは、何が子供のためになるのか、子の福祉を一番に考慮して決定していただきたいものです。
養育費月額5万円で協議離婚しました。
最初はちゃんと支払ってくれていたのですが、そのうちどんどん滞るようになってしまい、遂にストップしてしまいました。
このような場合、養育費を何とか支払わせるにはどうしたらいいでしょう。
まず、離婚の際に強制執行認諾条項付公正証書を作成し、その中で養育費の支払いを取り決めていた場合、この公正証書を基に相手の給与、財産に対し強制執行することができます。
強制執行には多少手続きを要しますが、比較的素早く回収できるでしょう。
ただし、相手に目ぼしい財産がない場合や、職に就いていない場合にはやはり回収は難しくなります。
一方、離婚の際に口頭で養育費の支払いを約束した、若しくは、公正証書以外の離婚協議書等書面でお約束していた場合、
①裁判所に対し、契約に基づく債務の履行請求の訴え提起をする
②家庭裁判所に対し、改めて養育費支払いの調停を申し立てて、養育費の支払義務を確定する
上記の方法によることが考えられます。
①の場合、勝訴の判決を得て、そのうえで相手の給与、財産に強制執行することになります。
②に場合、それでもなおかつ相手が不払いの場合、強制執行、履行勧告、履行命令等の手段を取ることが できます。
養育費は子供の日々の生活費であり、これが滞ると子供の生活に支障をきたし、とても困ったことになります。
上記のように裁判や、調停を経れば回収できることになりますが、調停はともかく裁判は費用もかかりますし、何より時間がかかってしまいます。
できれば離婚前に強制執行認諾条項付公正証書を作成されるとよろしいでしょう。
離婚の際に、養育費をもらわないことを条件に子供の親権をもらいました。
でも、離婚してみたらやはり生活は厳しく、養育費をもらわないと立ち行かなくなりました。
離婚の際に養育費を放棄しても、後日請求することはできるでしょうか。
結論からいいますと、このような約束をしていても、養育費の請求は可能です。
養育費というのは、子供が社会人として一人前に自立するまでに必要な費用です。
親は子供を扶養する義務があり、これは離婚して親権者にならなかった場合でも引き続き負うことになります。
裏を返せば、子供は親に扶養するよう求める権利があるということになります。
親権者は子供の法定代理人ですが、例え親権者である母親であっても、この子供の扶養請求権を勝手に放棄することはできません。(民法881条)
※民法881
扶養を受ける権利は、処分することができない。
したがって、一度養育費をもらわないという約束をしても、養育費は請求できます。
これはたとえ離婚協議書にそのような合意があっても同じです。
お困りの方は一度ご相談ください。
私が子供の親権者となって離婚し、離婚後元夫(父親)から養育費の支払を受けていました。
しかし、しばらくたった後、元夫から振込まれる養育費の額が減りました。
理由を聞いてみると、
私が再婚して、再婚相手と子供が養子縁組したからということでした。
このように離婚の際公正証書で合意した養育費の額を一方的に減額することは許されるのでしょうか?
というご相談をいただくことがあります。
基本当事者の合意が優先されますので、元夫(父親)の申入れに理由があるとして、母親が減額に応じるのは自由です。
また、逆に母親側が養育費の増額を申し入れるケースもあり、これも同じように当事者間で合意ができれば問題はありません。
問題は応じられない場合です。
この場合、やはり家庭裁判所に調停・審判を申し立てることになります。
では、家庭裁判所はどのような場合に一度決められた養育費の額を減額若しくは増額するのでしょうか?
契約一般についていえることですが、契約時にまったく予見できなかったような社会的事情の変動が当事者の責に帰することができない原因により生じ、しかもそれが重大であるというときは、当事者に契約上の債務履行を迫ることが著しく公平に反するような場合、契約内容の変更を請求することが認められています。
これを事情変更の原則といいます。
この原則は養育費に関する合意についても当てはまり、上記事情の変更があれば養育費の減額の申入れを請求できることになります。
では、事情変更とは具体的にどのような場合をいうのでしょうか。
社会経済的な要因としては著しい物価の高騰、貨幣価値の変動という事情があります。
こちらについては比較的経済の安定している現在の日本ではあまり考えられないでしょうか。
当事者に関するものとしては、父母の再婚、再婚に伴う子の養子縁組、父母の病気、失職、収入の大幅減等の事情があります。
例えば、先の相談のように、親権者となった母親が再婚し、その再婚相手の男性と子が養子縁組した場合、子に対して一次的に扶養義務を負うのは養親ということになり、実親は二次的な義務を負うにすぎません。
この場合、父親からの養育費減額の申入れは認められる可能性が高いと言えます。
ただし、このように事情変更として考慮されうる事情があったとしても、養育費の減額が認められるのは当事者の合意ができた場合、若しくは家庭裁判所の調停が成立した場合、審判が確定して場合であり、一方的な申し入れで当然に減額されるものではありません。
先の相談のように父親の判断で一方的に減額することは許されず、当事者間で合意し、新たに合意書を作成するか裁判所による判断を待たなくてはなりません。
離婚協議書で面会交流について定めますが、この面会交流について、面会させなかったらどうなるのか、というご質問があります。
平成26年12月4日に興味深い裁判所の決定がくだされていますのでご紹介します。
離婚により親権者となった母親が、調停で決められた父親と子との面会交流を実現させなかったということで
父親が親権変更を家庭裁判所に申し立てました。
この夫婦、離婚の際に双方が親権を求めていましたが、調停の結果、月1回の面会交流を条件に母親が親権者となって調停離婚が成立しました。
しかし、その後父親は1年以上に亘り面会交流できず、やむなく親権変更の申し立てとなったようです。
もともとはこの父親と長男の関係は良好だったようですが、面会交流は長男がこれを拒む態度を示して上手くいきませんでした。
父親の側は「母親が拒むよう仕向けている」と主張しています。
福岡家庭裁判所は、
面会交流を実現できない原因は主に母親にあるとして、円滑な面会交流の実現のためには親権者変更以外に手段はない、と親権の変更を認めました。
(ちなみに親権は父親に変更としましたが、監護権は母親のままですので、この決定により父親が子を引き取ることはないようです。)
これまで、虐待等を理由に親権変更を認めた裁判例はありましたが、面会交流を理由に親権変更が認められたのは異例です。
このところ、離婚協議書や調停で定められた面会交流が実現されず、面会交流を望んで家裁に調停を申立てるケースが増えているといいます。
たしかに、DVや虐待があった場合等で、父親と面会することが子の心身の発達にとって好ましくないという事情があれば面会交流が制限されることもあるようです。
しかし、そのような事情もないのに、ただ、父親と面会させたくない、父親と関係を持ちたくないというだけでは
面会交流を拒む正当な理由にはならないでしょう。
面会交流を実現させなかったからといって、全てのケースがこの決定のように親権変更に結びつくわけではありません。
しかしこの福岡家裁の決定は、面会交流を不当に拒む親が驚く程多いという現実に対して、あまりに不当な面会交流の拒絶に対しては厳しい態度で望むという裁判所の方針を示したのかもしれません。
面会交流は子が一人の人間として成長発達するために必要な子どもの権利でもあります。
何が子どもにとって最良なのか常に考えなければなりません。
DV,虐待などの事情等正当な理由がない限り離婚協議書、調停調書で決められた最低限の面会交流は実現させるようにした方がよさそうです。
養育費の支払開始時期については、離婚により、子が扶養を要する状態が発生したときですが、実際は離婚した月から、もしくは離婚した月の翌月から等決めることが多いです。
養育費の支払終期については、以前は子供が高校を卒業する「18歳になるまで」とするのが主流だったようですが、最近は一般には成人(満20歳)に達する月までとするのが原則です。
裁判例でも、
「子が成年に達したときは母の親権が終了するから、子の監護に関する処分としての養育費の請求は、子が成年に達するまでの分に限られる」
とするものがあります。
しかし最近、終期については「大学を卒業するまで」とする場合も多く見受けられるようになってきました。
これは、大学に進学、卒業することが特別な状況とは言えなくなってきたという背景があります。
負担義務者(主に夫でしょうか)が子の大学進学を強く望み、大学進学費用を自ら負担する旨認識しているときなどは「大学を卒業するまで」、中には「大学院を卒業するまで」と定めることもあります。
このあたりは協議離婚であれば当事者が自由に決めることができところなので、父母が子どもの将来についてよく話し合って決めていただきたいものです。
とにかく離婚を急ぎたいから、養育費の取り決めもしないまま子どもの親権者となって離婚する方も多いことと思います。
厚生労働省の発表によると、離婚後養育費の支払を受けているのは全体の2割に止まっていますので驚きです。
このような場合、離婚後でも別れた夫に養育費の請求ができるのでしょうか。
結論からいいますと、離婚後でも養育費の請求はできます。
親権者とならなくても、親であることに変わりなく、子供に対して扶養義務を負うことになります。
養育費支払義務は「生活保持義務」と言われ、親は、自分の生活を保持するのと同程度の生活を子供に保持させる義務があります。
なので、単に借金がある、収入が低いという理由から養育費の支払いを免れることはできません。
現に自分で居住し、生活が維持出来ている以上、自らの生活を削ってでも子にも同等の生活を保障しなくてはなりません。
また、無職の場合でも潜在的稼働能力があるとして収入が認定されることもあります。
このように、離婚の際養育費の取り決めをしなかったような場合、まず、元の夫と協議が可能な場合はまず協議をして、養育費の分担額、支払時期、支払方法を取り決めることになります。
では、いつの時点からの養育費がもらえるのでしょう?
遡ってもらってもよいのでしょうか?
この点につきましては、諸説あります。
①請求した時点から
②子が要扶養状態にあり、扶養義務者が扶養可能状態にあった場合、
過去に遡って請求できる
裁判例もまちまちですので、
具体的にご検討の際は一度ご相談ください。
協議がまとまれば養育費分担に関する合意書を作成し、
できればこれを強制執行可能な公正証書にしておくとよろしいでしょう。
強制執行認諾条項付公正証書にしておけば、相手の支払が滞った場合、裁判をすることなく、給与、財産を差し押さえることができるようになります。
このような協議ができない場合、やはり家庭裁判所に養育費支払の調停を申立てることになります。
離婚をしたいと思っています。
ただ、結婚を機に家庭に入り、ずっと専業主婦でした。
夫は家も土地も俺の名義だし、俺がローンを払っているのだから財産分与はしないと言っています。
専業主婦でも財産分与をしてもらえるのでしょうか?
このようなご相談をお受けすることがあります。
結論から言いますと、原則として財産分与は2分の1の割合でしてもらえます。
これは財産の名義が相手のものであっても関係ありません。
財産分与というのは、婚姻期間中に協力して形成した財産を、離婚に際し清算することをいいますが、夫婦で協力して形成したという実態があれば、名義の如何に拘わらず、夫婦の共有とみなされ、財産分与の対象となります。
収入があるのは夫の方かもしれませんが、これは妻が家庭において家事をこなし、子育てを分担しているからです。夫の収入は妻の貢献があって得られるものであり、夫婦で協力して形成したという実態があるのです。
また財産分与の割合についても、以前は、専業主婦などのようなケースでは、2分の1ではなく、夫の取得割合が多い傾向にありましたが、最近では特段の事情がないかぎり、2分の1の割合が適用されているようです。
子供の面会交流について興味深い最高裁の判例が出ているのでご紹介します。
(平成25年3月28日決定)
面会交流の実施条件に違反するような場合、これを強制執行(間接強制)できるか否かという点について3件まとめて判断が出ています。
離婚の際に離婚協議書や調停調書で監護親でない親と子供との面会交流が決められると思いますが、これが約束通り実行されないことが多々あります。
当事務所でも「別れた奥さんが子供に会わせてくれない」というご相談を多数いただきます。
そのような場合、非監護親と子供の面会を実現させるべく、間接的に強制できるのか否かということに関する判例です。
間接強制とは「実施しなければ1回につき○○万円支払え」などと金銭による罰則を課すことで間接的に強制することです。
判決当時、ちょうど子供の面会交流についてかなりこだわりのあるお客様から離婚協議書の作成依頼を受けていたので、大変参考になるものでした。
結論としては間接強制を認めるものと認めないものがありました。
判断を分けた基準としては、面会交流の給付内容が特定されているか否かという点です。
つまり面会交流の方法が具体的・詳細に決められているかということ。
判決では「面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡し方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないと言える場合には、間接強制決定をすることができると解するのが相当」としています。
○毎週土曜日に面会すること
○引渡しは午前○時、
○終了は午後○時
○引渡し方法は○○駅改札で、
○やむを得ない事由で変更が必要なときは連絡を取り合い代替日を決める
上記のように面会の方法が具体的に決められていれば債務の内容が明らかであるからこれを実現しないのは債務不履行…ということでしょうか。
この決定をみると今後子供の面会交流について細かく決めたがる方が増える可能性がありますね。
ただ、あまり細かく決めようとするとなかなか合意に至らず、離婚もできないことになりかねませんし、また細かく決めすぎてがんじがらめになってしまう可能性もあります。
お子様がまだ小さいときは取り決め通り面会できるでしょうが、大きくなるにつれて子供の生活環境も変わってきます。
取り決め通り面会がスムーズにできない状況も出てくるでしょう。
面会交流は非監護親が子供と触れ合うものである一方で子供のためのものでもありますから、子供の福祉に配慮してきめなければなりません。
そのあたりとのバランスが難しいですね。
離婚協議書のご依頼をいただくことも多い当事務所ですが、これから一人でお子様を育てていかれるお母さんが少しでも安心できるよう、離婚協議書の作成には出来る限りの配慮を心がけております。
以前お客様から、
養育費の支払を一回でもしなかった場合、成人までの毎月の養育費全額を一括で支払ってもらえるよう取り決めたい
というご要望がありました。
分割金の支払を怠った場合に、分割して支払う利益を失い、残額を一括で支払わなければならないとする約束のことを「過怠約款」といいます。
借金の返済ではもちろんのこと、例えば慰謝料の支払いをする場合においても、一括支払が難しいようなケースでは分割払いにすることがあります。
分割払いの際、このよう過怠約款を設けることが多々あります。
支払を怠ったら残額を一度に支払わなければならなくなりますので、このように取り決めることで、毎月の支払を促すことにもなります。
確かに、養育費の場合も慰謝料の場合と同じように考え、受け取る養育費の総額を想定し、それを分割で受け取っていると考えれば、過怠約款を設けられるとも考えられます。
これから子供を育てていくお母様の側からすると、毎月の支払が促されることになりますし、仮に不払いがあったとしても残りを一括でもらえるならそれはそれで安心ですよね。
しかし、子供の養育費というのは、子供の生活費、教育費等であり、子供が成長していく過程の中でその時々に支払義務が発生するものなので、毎月支払いが原則です。
また、父母が再婚した場合など、生活状況の変化によって額(支払義務内容)が変動する可能性がありますし、仮に子供が途中で就職した等事情の変更があれば支払義務自体がなくなる可能性があります。
上記のように支払義務内容が変更、消滅する可能性があることから総額が想定しづらく、過怠約款になじまないと言えます。
実務においてはやはり否定的な立場が多いようです。
念のため、公証役場にも確認をしましたが、過怠約款は入れられないというお答えでした。
ただ、やはりこれでは少し不安が残ります。
その代わりというのも何ですが、養育費の支払が滞り、強制執行の手続をする場合、既に不払いになっている分についてはもちろんのこと、将来の分についても強制執行の手続が取れるようになっています。
(公正証書による離婚協議書を作成している場合です)
従来養育費は、毎月数万円という少額にもかかわらず、毎月の支払を怠ったときに、その都度給与の差し押さえを申し立てることが必要でした。
毎月毎月差し押さえの手続をするのは時間的にも費用的にも相当の負担です。
数ヶ月不払額がまとまってから手続するにしても不払いが続けば毎日の生活に支障をきたし随分不都合でしたが、現在はその不都合が解消され、まとめて手続することができます。
さて、離婚の際に取り決めることとして財産分与というものがあります。
婚姻中に形成された財産を離婚の際に清算することです。
また、離婚後の経済的な弱者(通常は妻)に対する扶養を含むことがあります。
婚姻中に形成された財産なので、
結婚前に貯めていたお金や、自分の親の遺産などは分与の対象にはなりません。
その一方で、
家や車などたとえ夫の名義になっているものでも、
婚姻期間中に得た給与などで購入したものは夫婦で形成した財産として分与の対象になります。
見落としがちなのが退職金です。
退職金も賃金の後払い的性格を持つことから財産分与の対象とする裁判例があります。
なので、既に支払われている退職金については財産分与の対象となるでしょう。
問題は未だ支払われていない将来受領予定の退職金の処遇です。
不安定な世の中ですから、退職金が支給されるか否かは不確定です。
これについて参考になる裁判例があります。
「勤続30年超の勤務先を相手方が退職すれば支給を受ける蓋然性が翏い退職金は
財産分与の対象にとなる共有財産に当たる」(東京家庭裁判所平22年6月23日)
勤続年数が長く、もうすぐ定年を迎える状況で
退職金が支給されるのはほぼ間違いないような場合は
財産分与の対象になる傾向が強いと言えるでしょうか。
逆に退職までの年数がまだまだ長い場合
不確定さは強くなり、財産分与の対象とはなりにくいと言えるでしょう。
熟年離婚を考えている方などは是非検討するべき項目だといえますね
夫婦が離婚することになり、
母親が子供の親権者となり、子を引き取り育てることになったとします。
婚姻期間中妻と子は、夫が加入している健康保険(民間企業勤務)の被扶養者でした。
このようなケースで、離婚後、子供の医療保険はどうなるのでしょうか。
この点、妻(母親)が離婚に際し、新たに健康保険(又は国民健康保険)に加入する必要があるのは当然として、子供については、親権者となる母親の保険に加入が必要とも思われます。
恐らく、多くの方がそのように思っているでしょう。
しかし、子供については離婚後の扶養の実態に従って、父と母のどちらの医療保険に加入するかが決まり、父母のどちらが親権者であるかというのは直接関係しませんし、同一の世帯に属している必要もありません。
仮に、離婚後父親が多額の養育費を支払い、子の生活が主にその養育費によって維持されているのという事情があり、子が父の健康保険の被扶養者と認定されれば、父の保険に加入したままということも考えられます。
したがって、離婚した後に、子供が母親であるあなたと生活している場合でも、当然に子供が父の健康保険の被扶養者の資格を喪失するわけではないのです。
離婚後、父に養育費は支払ってもらっているが、主に母の収入で生計を立てているのであれば、母の加入している健康保険(又は国民健康保険)に加入することになりますので、この場合は、母の加入している保険に子の異動届を提出します。
その際子供の資格喪失証明書(夫を被保険者とする健康保険の被扶養者たる資格を喪失したことの証明)の添付が必要になります。
ご不明な点があればご相談ください。
先日某芸能人夫婦の離婚が騒ぎになっていましたが、
その離婚を決意するに至った理由がモラハラではないかと言われています。
モラハラ=モラルハラスメントとは、モラルによる精神的な暴力、嫌がらせのこと。俗語としてモラハラと略すこともある。フランスの精神科医、マリー=フランス・イルゴイエンヌが提唱した言葉です。
DV=ドメスティックバイオレンスが暴力で相手を支配しようとする行為なのに対し、モラハラは無視・暴言・脅迫などの精神的は嫌がらせをすることで、相手を支配しようという行為を言います。
その特徴としては、
○最初はとてもいい人、優しい夫、彼
○相手の心を掴んだと感じた時から豹変する
○外面はとてもいい 外ではいい夫を演じる
○家の中では口をきかない、無視をする、食事を一緒にとらない、家事の不出来を次々に指摘する等
○身体的暴力はない=証拠を残さない
○本人に対してのみならず、子供をいじめたり、大切なものを捨てたり、ペットをいじめたりする
○嫉妬深く、常に相手を自分の監視下に置きたがる
等々あるようです。
では、モラハラを理由に離婚はできるのでしょうか。
離婚を求める裁判を提起する場合には、民法770条1項各号に定める「離婚原因」が必要です。
離婚原因は以下のとおり。
○離婚原因(民法770条1項)
1 配偶者に不貞な行為があったとき
2 配偶者から悪意で遺棄されたとき
3 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
4 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があったとき
暴力や虐待行為は例え夫婦間でも許されるものではありません。
配偶者からの暴力(DV=ドメスティックバイオレンス)は「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)として離婚原因になりえます。
また、暴力には、身体に対する暴力のみならず、心身に有害な影響を及ぼす言動も含まれますので、精神的な暴力も暴力の一種です。
平成13年に施行されたDV防止法においても、
「配偶者からの暴力」には、精神的暴力も含まれることが明確化されています。
従って、この芸能人夫婦のようにモラハラを理由にした離婚裁判で、
もしモラハラが事実なのであれば、離婚が認められる可能性もあるのです。
もちろん、モラハラは夫(男性)に限ったことではなく、
妻の側のモラハラというのもあります。
妻のモラハラを理由に家に帰りたくない夫というのも増えているようです。
心当たりがある方は一度ご相談ください。
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